MA マリーアントワネット 2018 感想。

こんばんは。あさがおです。

 

先日、帝劇で「マリーアントワネット、」観劇しました。

総合的な感想を言うと

  まあまあ良かった

って感じでした。

が、「総合的に」そう言う感想になったのは、ひとえに「クライマックスでの役者の演技が良かったから」と言うだけで、クライマックスまでの間は

  つまらんな・・・

と思いました。

けっこう辛口になると思うので、「素人がわかった口聞くな」と思いそうな方はご注意ください。

ただ、先に申し上げておくと、私の不満は役者ではなく、脚本や翻訳等に向けてのものです。

 

まず、私が見た回の出演者は

  マリー・アントワネット   笹本玲奈

  マルグリット・アルノー   昆 夏美

  フェルセン伯爵       田代万里生

  ルイ16世         原田優一     (敬称略)

でした。

 

花總まりさんは、以前「モーツァルト!」「レディ ベス」を観た際に、ちょっと声が弱いかも(年齢的に?)と思ったので、歌唱力を信頼している笹本玲奈さんの回にしました。

また、昆ちゃんについても「ミス・サイゴン」で惚れていたので、ソニンも好きだけどこちらで。

 

ですが、正直、笹本さんにはマリー・アントワネットはまだ早かったのではないかと思います。

笹本さんは、割と地声を張り上げて歌うタイプで、その声の強さ、ハリが魅力でもあると思っています。なので、初演のマルグリット役は素晴らしかった。

ですが、マリー・アントワネットは王妃。地声を張り上げるのではなくて、ソプラノで歌ってこそ、王妃の品格を表現できると思うのですが、笹本さんの持ち味の地声で歌い上げる歌唱法、マリー・アントワネットには似合わなかった・・・。

品がないと言うか、俗っぽいと言うか、ヒステリック?に感じました。

そして、私が観た回の笹本さんは、冒頭から裏声が不安定でした。

正直、外部の公演で歌唱が不安定だと感じたことはあまりなかったですし、笹本さんの歌唱力を信頼していただけに、衝撃ではありました。

しょっぱなからこれでは・・・と。

その後も地声と裏声を使い分けながら歌っていましたが、やはり裏声はイマイチ。

さらに、やはりアントワネットを演じるには若すぎた

オーラ、貫禄の点で、「王妃」として説得力のある佇まいではなかったかなと思います。

 

ただ、

笹本さん自身が悪いのかというと、そういう印象ではない

んです。

 

私は、脚本、翻訳が良くなかったと思います。

2006年初演版を大幅に改訂していましたが、“改悪”だったのではないでしょうか。

初演版も、「ワールドプレミア」と鳴り物入りで上演されたわりに不発だった印象で、私自身も、楽曲はいいけどそれほどハマれないなという感じでした。

クンツェ、リーヴァイの作品ということで、「M!」や「エリザ」のような壮大かつ感動的なものを期待していたのですが、なんだろう、この2作品ほど心に響かなかった。

栗山民夫さんの演出のせいだったのかもしれません。

栗山演出は、少々無骨?というか、情緒性に欠けるところがあると思うので(もちろん、それが「良さ」というか「味」だとも思います。)。

ですが、まだ初演は2人のMA(マリーとマルグリット)に共感できたし、ストーリー

にも心情的にスッと入っていけたかな(少々美化されているところは否めませんが。)。

 

2018年版は、MAどちらにも全く共感しませんでした。

 

その原因は?

 

ずーっと、「外から見ている」感が強かったからです。

初演版は、マルグリットが、かなり冒頭のシーンで、幼い頃にマリーの婚礼パレードを見て「なぜ自分とあの人はこんなに違うのか」と絶望した気持ちを歌い上げていました(『なぜ』)。

この歌を聴いていると、自然に情景が浮かんだものでした。

きらびやか婚礼パレードを、群衆の後ろの方で見ている、薄汚れた少女。自分が生きている世界と、あちら側の世界、すぐ目の前を通っているのに、手が届かないほど遠い。

マルグリットが感じた悲しさや、歯がゆさに触れて、いたたまれなくなりました。

 

でもまだ、マルグリットはマリーに対する憎しみのようなものは持っていなくて。

その後、『100万のキャンドル』で、民衆の困窮を顧みない貴族や王室を目の当たりにし、王室や身分制度に対する疑問、不信感が芽生え、それが自分と同じイニシャルを持つマリーへの憎しみへと変わっていく様子が、よく描かれていたのだなと今になって思います。

こんな風に、初演版は、冒頭からマルグリットの心情に寄り添える構造で、共感できる流れだった。

では、マリーに共感できなかったかというと、そうでもなかった。

「一方、マリーは」と言った感じで、こちらも王妃であるゆえの不自由さ、寂しさ、それを癒すためにフェルセンを求める気持ちが、ちゃんと感じられたように思います(楽曲はあまり覚えていないのですが)。

だから初演版は、2人のMAどちらにも感情移入しながら物語が進み、2人に象徴される対立構造が浮き彫りになるにつれて、客席も焦燥感を感じ、クライマックスでの2人の交わりが一層悲しく感じられた。

また、今回は登場しない、アニエスの存在も大きかったと思います。

マリーを躍起になって憎むマルグリットを諌める、中立的立場のアニエス。

彼女がいることで、マルグリットにも、それに共感する客にも迷いが生じ、天秤が傾きすぎるのに歯止めがかかっていた。

 

2018年版は、マルグリットは登場した時から怒ってました。マリーを憎んでました。

その理由がはっきりしないまま。

後から『なぜ』を歌いますが、見ている方はマルグリットがマリーを標的にしている理由がよくわからないままマリーが攻撃されている(しかも、あんな形で2人が会うということがあり得るのでしょうか・・・)ので、物語から置いてけぼりで

     「は?この子、何してんの?」状態。

かと言って、マリーも、冒頭からいきなりフェルセンを追いかけていて、(客側にある程度の知識があるとは言え)王妃の孤独などは客側にはわからない状況なので、節操がなく見える。

2人のどちらにも共感できないまま、物語はどんどん進んで行きますが、どちらにも共感していないので、民衆側の楽曲(初演の『心の声』『正義の鐘よ』などに当たる曲)も、全く胸に迫らないし、マリーとフェルセンのデュエットもときめかない。

役者はかなり熱い演技をしてました。昆ちゃんも、民衆役の方々も。

昆ちゃんなんか、おそらく怒りに震えながら歌っていました。

ただ、客席側の温度が上がっていないので、大げさに見えを切られるほど、白けました。

民衆がマリーの醜聞を騒ぎ立てる姿も、ただただイラつきました。マリーにも共感していないので、マリーが可哀想だと思ったわけではないのですが、タイトルロールがけなされ続けるのを見ていると、「一体誰が主人公なの?」と宙ぶらりん状態で放置され、舞台上だけやたら盛り上がってドヤ顔で歌われてもなと。

 

また、『100万のキャンドル』『心の声』などは、初演版だと非常に感動したのですが、そもそも一番盛り上がるパートがカットされていて、不完全燃焼。

歌詞についても、初演版は美しい歌詞でしたが、今回はなんだかなあ。

「今聴こえる、心の声が。叫んでる。強くなるんだと。」(『心の声』

「決して許さない。云々カンヌン」

になるなんて・・・。

他の曲もそんな感じで、楽曲を楽しみにしていたのに、歌詞のせいで半分くらい興が削がれました。

 

翻訳者は同じなので、脚本が変わったんでしょうね。

より「セリフらしい」歌詞になったとも言えましたが、私は初演版の歌詞の美しさ、メッセージ性の強さが好きでしたから、悲しかった。

楽曲の配置や、そもそも歌う人物(キャラ)が変更されていたものも多く、残念でした。

初演版と比べて、全体的に楽曲の「劇的さ」が薄れていた気がします。

なので、良い曲が多いのに、感動できなかった。

 

フェルセンも、失礼かもしれませんが、見目麗しくなかったし、それを補うほどの歌唱力でもなかったので(上手でしたが、外見上のハンデを払拭するほどではなかった)、   

    なーんでこの人がそんなに好きなの

と思いました。

 

逆に、ルイ16世はとても良かった

とてもとても良かったです。ルイ16世って、あまり魅力を感じたことはなかったのですが、今回の原田さんのルイは、善良にして凡庸な王と言った感じで、本当に「鍛冶屋なら良かったのに」と思いましたし、それでもその根底にある国民への愛も伝わってきて、非常に魅力的だと思いました。

オルレアン公(吉原光夫)、ランバル夫人(彩乃かなみ)も良かったです。

ローズ・ベルタン(彩吹真央)とレオナール(駒田一)は「いる?」と思いましたが、上手でした。

 

 

今回、私、拍手したいと思った場面はほとんどありませんでした

原田さん、吉原さんには拍手しましたし、笹本さん、昆ちゃんが頑張ってるなあと思った部分は敬意を表すために手を叩きましたが、感動を表現するための拍手はできなかった。

感動しませんでした。

 

最初に言ったように、クライマックスは流石に感情移入しました。涙も出ました。

でも、そこだけでした。

 

今回の演出、外国人の演出家ですね。ロバート・ヨハンソンさん。

この方の演出家としての経歴は存じ上げませんが、最初は、外国人の演出家だからイマイチ惹かれなかったのかなと思っていました。

でも、やっぱり脚本なのかな。

演出がまずくて引いたということはなかった気がします。

 

ということで、実家にある初演版のハイライトCDを聴きたくなりました(>_<)

こちら、アマゾンで見てみたら、もう廃盤になっているとのこと?

 

でも帝劇では売っていましたよ?

メロディラインはとても美しく、壮大、劇的!なので、歌詞も美しい初演版をお勧めします。

因みに、マリーは涼風真世さん、マルグリットは笹本さんと新妻聖子さん、フェルセンは井上芳雄さん、アニエスは土居裕子さん、オルレアン公高嶋政宏さんで、山口祐一郎さんもカリオストロという役で出演されてました。

 

あ、そうだ、一番最後の曲が、初演版と2018年版は違ってます。

あのラストの歌も好きだったのになあ。

色々残念です。

 

長々と偉そうに辛口なことを書きまくりましたが、正直な感想です。

最後まで読んでいただき、ありがとうございました。

 

ではでは。